5話
---- 絢 -----
マジ切れした日から一度もこの部屋に海を招いていない。
そんな気になれないから。
海とは普通にメールしている。
もう海に望むものは何もないから何事もなかったかのように振舞っている。
私のなかにあった暖かで大切な想いは消えてしまったのだ。
そう、あの日の悔し涙と共に!
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どうしてこんなになさけないの?
どうしてこんなに悔しい想いをしなければならないの?
どーして? どーして?
こんなに涙が出るの?
こんなに人にすがろうとしたことがあっただろうか?
私はこんなに泣く女(ひと)だった?
実は泣いている途中で突然アホらしくなりました。
そして天からこんな声が聞こえたのでした。
・結婚相手に考えられるのは堂本海だけなのかい?
・世の中半分は男じゃないか。 別の誰かであっても自分を想ってくれる人が
いたらその人でもいいんじゃない?周りをよく見てごらんなさい。
実は半年程前に5歳年上の石橋祐二さんから結婚を前提にした交際を
申し込まれていた。 我が社に残っている数少ない素敵な独身貴族の一人。
結婚が決まっている同期の中にはいつか石橋さんから声がかからないかと
期待していた者も少なからずいた。
恋愛が上手くいかなくなった時社内恋愛だと難しいからきっとどこか他所で
可愛い彼女を作っているンではない?ということで我が同期メンバー内では
そのように話にオチをつけていた。
なので年初めに真剣な交際を申し込まれたときは心底驚いた。
こんなすごい話を・・・・しかし今まで失念していたとは。
海との付き合いがあまりに長かったのと私自身の他所見はしない一途な
性格が石橋氏の申し出話を記憶の中から消していたのだろう。
石橋さんは皆の期待を裏切らないイケメン紳士で大人だった。
「中学から付き合っている彼がいます。私には勿体無い位のお話ですが
お受けできません。」と告げた私にこう云った。
『 この先、僕の申し出を思い出すことがあったら迷わず声をかけてほしいな。』
『 一度断られてすぐに気持ちが無くなる様な半端な気持ちで松村さんに
声を掛けたわけではないからね。』と。
今がまさにあの日石橋さんが云ってくれた迷わず声を掛ける時なのだ。
私に涙は似合わない。
振られて泣くような・・・。
半年も前の話なので時すでに遅しの可能性は大いにある。
だが実行あるのみ。
交際→ウエディング→出産→幸せな家庭
旦那さまGet、かわいい赤ちゃんGet、そしてそして幸せな家庭Get・・・
叶えてみせるわ。
海のことは吹っ切れた。
絢さまの結婚提案にウダウダしぶる輩に何の未練があるものか。
あんたは若い子と楽しくよろしくやったらいいよ。
さ-よ-な-ら 。
続く・・・・