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だけどそれは、設樂家の面々が仕組んだ壮大な計画でした。
その日、私や慎一さんそして課長の娘の広美ちゃんや息子の
卓也くん達と家に着くとすでに課長も奥さんも出先から帰宅
していた。子供達が2階に上がると慎一さんも用事があるか
ら、と言って帰ってしまった。少しがっかりしてしまい、ボ
ーっとしたいたら、お茶が出された。設樂課長のご両親
と奥さん私のメンバーでお茶会?
え~っと子供たちも慎一さんもいないこの空間で間が持つだ
ろうか。そんな事を気に掛けていたら、課長からとんでもな
い提案が話題に上がった。
「黒崎さん、君は突然の話で驚くと思うけどぜひとも考えて
みて欲しいことがあってね、それで子守と称して家に来ても
らったんだよ。」
私がキョトンとしていると、その話は続けられた。
「慎一との再婚を真剣に考えてみてくれないだろうか。所謂
結婚前提の付き合いを・・って事になる。ずっと君の事を見
て来た僕が太鼓判を押して家族にも紹介させてもらった。」
そう話を進める課長の側でニコニコと穏やかな空気を纏った
ご両親と奥さん。
『もしかして、クリスマスパーティのお誘いとか、
初詣のお誘いとか・・・のことでしょうか?』
「目的もないのに既婚者の僕が独身女性を招待は・・しない
よね?」
『え~~っ!!そうなんですか? 私はてっきり・・・・。』
「てっきり?」
『まぁそのですね。単に可愛い部下として、いえっ、はっき
り言いますと、バツイチで恋人もいなさそうな寂しい思いを
しているちょっと可哀想で可愛い部下をですね、少しのやさ
しさと労いを込めて誘っていただいているのだと解釈してま
した。』
「どう?」課長は微笑んで奥さんの方に向けて発した。
「あなたがいいって、ほんとに感じの良い女性(ひと)なん
だって言ってたの、よく判るわぁ~。素直でまっすぐな性格
だって事がね。黒崎さん、夫が前からうちの課にすごく良い
女性(ひと)がいるんだ、めったにあんな良い女性(ひと)
いないって・・皆に見せたいなぁ~なんて、ずっと折に触れ
私達に言ってたものだから私達家族はみんなずっと気になっ
てたの。」
「素敵な女性がいるってわいわい騒いでも、もう私という
妻がいて、今更私を返品する事なんて出来ないのだから、
どうしようって言うのかしら?なんて夫に意地悪言ってたり
したんですよ。」
『えーっ、そんな! 素敵な奥さんに私など敵うはずありま
せんっ~~!』
「えーえー、子持ちの親父に黒崎さんは勿体無さ過ぎて・・
って、ここで自分の夫を貶めては駄目ね。うちの旦那様も
すごく素敵で私も子供達も大切にしてもらって有難い
事です。」
そうおっしゃって、奥さんは課長やご両親に向かって心から
の感謝を述べられた。 やっぱり課長の素敵さは本物だった
ンだ。