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笠原くんとの別れを11月頃に入った頃には予感していたとは
いえ、はっきりとお別れしたのはほんの数日前なのに。もう
慎一さんとの未来を勝手にいいように考えてしまうなんて
ほんと自分でじぶんにあきれるし、開いた口が塞がらないと
は、この事だ。
けれどこの心震える感触は拭ってもぬぐっても無くならない。
自分でも首を傾げたくなるくらい。こんな事に捉われていた
私は気が付くと、すっかり笠原くんの事を思って心を痛めたり
する事もなく日々を過ごしている事に気付いた。
設樂課長は私のLuckyかもしれない。上手く言えないけれど。
その週の終わりにLucky課長からまたもやのお誘いが。
私は後で同じ課の峰岸麻由美ちゃんから、もしかして黒崎さ
ん課長と不倫なんかしてたりして・・なんてことないですよ
ね?などと言われる始末。
『峰岸さん、や・め・て!私がそんな人間に見える?』
「見えるも、見えないも関係ありませんよ。」
『きーーっ!!! 不倫なんて後100万年長生きしても私には
無理。不倫する位なら嘱託で勤めてる男寡のおじさま方の中か
ら選んで奥さんにしてもらうわよっ。』
「ぶはははっ・・・。黒崎さんらしい回答に安心しました。」
麻由美ちゃんにぶはははって笑われてしまった。
「最近よく設樂課長から話しかけられてて羨ましい~ぃので
少し煽って困らせちゃいましたぁ~。課長って素敵ですよ
ね。高学歴で高身長、性格も良くて男らしくて頼りがいも
あって、モテるのに独身の女子には目もくれず、仕事熱心で
と思ってたら、どーやら黒崎さんにだけはここに来て最近
親近感があって・・・。
私も設樂課長に少しでも振り向いてもらいたくていろいろ
アタックしてるんですけど、門前払いばっかです、クスン。
課長みたいな男性(ひと)が旦那さんだったらって・・何で
私、課長が独身だった頃に出会わなかったんだろう。」
『ちょっと、峰岸さん本気入ってるわよ。それ、怖いよ。
もう設樂課長は人(おくさん)のものなんだから、その気持
ちは育てては駄目なのよ。摘・む・の!チョキンって!』
「課長に憧れてる女子は他にも結構いるんですよ。でも課長
は誰の手にも落ちないんです。黒崎さん、ほんとに設樂課長
とは何でもないんですよネ?」
『止めて、本気入った質問はコワイでぇ~す!!』
設樂課長がそんなに女子から人気があったなんて
知らなかった。
先程の課長からの話は、週末に奥さんと出掛ける為、慎一さ
んに子供達を預ける事にしたのだが、一人では大変だし子供
達も私に会いたがっているので4人で猫カフェに行ってLunch
でもして、すまないけど慎一さんと一緒に子守を頼む、とい
うお願いだった。