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倉本くんが主催した合コンに病欠の子が出て、急に頼まれて
数合わせのピンチヒッターで参加した。勿論女子のほうの最
年長。壁の花覚悟だったのに、たまたま隣になった笠原くん
は、ずっと私の側にいて動こうとしなかった。この人も数合
わせで来たのかしら?もしかして、まさかの既婚者?そんな
事を考えたりしながらチビチビとドリンクを飲んでいたら
倉本くんが寄って来てあれよあれよという間に倉本くんと
山口さん、私と笠原くんとでカラオケするという話がまと
まってた。倉本くんと笠原くんとごにょごにょ小さな声音で
しばらく話した後、山口さんのいる場所に戻って行った。
周りを見回すと少しずつカップルができて、1組2組と会場
にしてあった店から出て行った。カップルにならなかった人
もそれぞれに遊んで帰る様で女子同士で帰る人達もいた。
最後に残されていた私達も帰る事に。おいしいコーヒーのお
店に行きませんか、と笠原くんが誘ってくれたのでふたりで
行く事にした。本当においしいコーヒーでコーヒー大好き人
間の私は幸せな気分になれたし、あまり主張しない性格の
笠原くんといるとほっと寛げた。シャイではにかみ屋さんな
笠原くんは私の目にとっても新鮮に映った。温かみがあって
声のきれいな彼の話し方が好きだった。
その次に倉本くんや山口さん達と一緒に行ったカラオケも
すごく楽しかった。いろいろと、つい昨年の事なのに思い
が次々と私の頭の中を駆け巡る。
どうせずっと独りでいたんだもの、結婚なんて考えずにいた
らもうしばら笠原くんの側にいられたかもしれない・・とか
少しの未練が自分を悲しくさせる。笠原くんは私の事を思っ
てあんなに早く結婚の事を考えてくれたのかもしれないけれ
ど、不安にさせてはいけないと思ってプロポーズしてくれた
んだと思うけど。こんな結末が待っていたのなら、結婚なん
か急いでしなくてよかったのに。
自分から引導を渡してしまったけれど、これから職場で他人
の振りでやり過ごすなんて事が出来るだろうか!
笠原くんが他の誰かと付き合ったり、お見合いで結婚が決ま
ったりした時、私は耐えられるだろうか。どこをどうやって
帰宅したのか部屋に着いたらほっとして、そしたら抜け殻に
なって頭の中も心の中も空っぽになって、また私は独りぽっ
ちになってしまったんだなぁ~って思った。心の中が乾き過
ぎたせいなの?涙の泉も乾いてしまったのか、心はひどく泣
いているのに涙だけが出てこなかった。
なぁ~ンだ、涙出てこないじゃない。 ふんっ!!
温かいお風呂に入って空っぽの心を抱えた身体を布団の中に
忍ばせて私は眠りに落ちていった。