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★2◎◎◎年の恋★ その23 (最終話)
(Real 話から創作)

----------瑛と亜佳里の未来---------
        (あかりのマンションで)



あかりは昔から風邪をこじらせるとすぐに高熱を
出したものだ。


寒がって震えるあかりを何度か抱きしめて寝た夜の事を
思い出した。

今回も寒くなったようで震えている。私は横に客用の布団を
ぴっちりと敷き、薄着になってあかりを抱きしめた。


明るい朝の光で私とあかりは同じ頃目覚めた。
私を見たあかりは幻を見たと思ったのか、私をじっと見た。


『えぇーーーーーっ、どうしてあなたがここに?』
あかりが云った。

「うん、どうしてだろうね・・。」僕はそんな風に答えたの
だった。

その日一日、僕はあかりのお母さんになって一生懸命
お世話をした。そんな僕を、あかりはただただ目を
パチクリとさせて見ているばかりだった。












今度こそ大切に思うだけじゃなく、大切にしようと誓った。
思うだけでは駄目なんだ、行動しないと。



あかりが旭くんと再婚する前の話だから15年以上も前のこと
になるが、あかりがほとんど家に寄り付かず仕事に没頭し
酒やたばこを味わうようになり、どんどんあかりに変化が
現れた頃、今度は男に家まで送られて来るようになった。

あの男はどこの誰なんだとは聞けなかった。
いつも居ないあかり。



私への腹いせに他所の男と付き合っているんじゃないかと
腹が立ったりやきもきしたり・・そんな感情にふと
気付いた時またもや自分の非道な裏切りを振り返る事に
なった。


私はこれまで何人かの女性とつきあってきたが自分から
アプローチして付き合ったのはあかりだけ。

いつも相手から告白されて付き合うというものばかりで
気が付くと何となく別れていたという、お決まりの
パターンだった。



だからこの時まで嫉妬という感情を知らずにいた。

嫉妬というものがこんなに苦しいものだとはその時まで
知らなかったのである。


その後、まさかの離婚。
そして追い討ちをかけるような旭くんとの再婚。


あかりにこれでもか、ときっちり落し前をつけられたあの頃
(別にあかり自身はそんなふうに思っていたとは思わないが
結果として)私は本当にヘロヘロになるほど凹んだ。



性悪な女にまんまとしてやられたアホでドジな男。
軽い気持ちで遊んで全てを失くした男。


泣きながら笑いました。ほんまアホだなぁ~って!


こんな父親を応援してくれる娘とこんな男の為に長い間
苦しんできた妻を幸せにしてやりたい。


しっかりしろ、、俺!!!






--------妻を抱いて添い寝中の会話---(日曜日の朝のこと)


「月曜~水曜まで北海道に出張なんだけど、土産何が良い?
定番の白い恋人にする?それともマルセイバターサンド
ビスケットにするかい?
北海道の生乳100%を使っていて、おいしいらしい。」


『どっちも・・・・・・・・。』  「判った。」


短い会話の後、妻はウトウトし始めた。今日は日曜だし
自分もこのまま妻と一緒に夢の世界を漂うか。


午後から起きてあかりが困らない様、食事と簡単な片づけ
をして一度自宅に戻り出張の準備をしてから、また
あかりのマンションに戻った。



明日はこの家から仕事に行こう。
夜はそのままあかりの側で一緒に寝た。

昨晩も今夜もあかりの隣にいる。



振り返れば17年前のあの日を境に、この腕からするりと
あかりが去っていった。


思えば100年も昔の事のようにも思うし、つい昨日の事のように
も思える。
二度と叶わぬ夢と諦めていたが妻をこの腕に抱きしめ声を聞き
私は二度と二度と、あかりを離したくないとその夜強く思った。



『私はあなたに捨てられたのよ・・。』そんな風にあの頃
詰られた事があったけど、捨てられたのは私のほうだった。



ずっとウトウトしている状態のあかりに話しかけた。

「あかり、籍を入れてくれないだろうか!」

『・・・・・・・・・・・・・・・・・・。』



「きっと僕のほうが先に逝くと思うから、遺産相続、遺族年金
の事諸々を考えるとあかりにちゃんと渡るようにしておいて
あげたいんだ。 傲慢な言い草に聞こえるかもしれないけど
あかりには父親の介護だってしてもらってるし、ずっと共働き
で家計も支えてもらっていたからね。あかりの権利なんだ。

考えておいて?! だからって、どうこうしてほしいなんて
思ってないよ。あかりは今まで通りに自分の自由に暮らして
いいんだよ。


籍を入れるだけの事だから難しく考えないで。
あかりに出て行かれない様に・・・・
ずっと僕の側にいてもらえる様に・・・
頑張りたいんだ、あかりは僕のお姫様だからね。」




ちゃんと聞こえていたようで、あかりから

『そんな上手い事云っても、私は側にずっといるって約束
できない。』     



「うん、判ってる。」



『またあなたの側にいるのがつらくなって逃げ出すかも。』


「いいよ、その為にこのマンションがあるンだし。」



『新しい愛を見つけたら、きっとまた出て行くわ。』



「それは阻止したいな。新しい愛をあかりが見つける前に
僕を信じて貰えるよう、振り向いて貰えるよう、全力で
頑張るさ。君を攫っていく奴が現れたら、今度はだまって
身を引くような事はしない。奪い返しに行く。」

私は更に言葉を重ねて云った。

「僕の願いは君だけ。
 僕のほしいのは君だけ。 ずっと側にいてほしい。」

あかりが焦ったように云った。


『どっ、、、どうしちゃったの? それっ、50才のおじさんの
台詞じゃじゃないわよ。』


「うん、そうだね。君に置き去りにされた遠いあの日に
願わくば僕が云いたかった事であり、願いだったンだ。」


『へっ・・変な言い草ねっ・・・。』

更にあかりは焦ってしまった。



静寂に包まれたスモールランプだけの明かりの下
僕はあかりの手をとった。愛しい人の手に触れたら
若者のように胸が高鳴った。

そして、胸が締め付けられて苦しくなった。

イヤ、幸せで苦しくなったンだ。



・・・


翌朝、瑛は私の為に朝食と昼食を作り置きして、さわやかに
颯爽と出掛けて行った。


見送る私の耳に、いつかつぶやいた瑛の言葉がよみがえった。


「ごめん、ホントにごめん!」 そして昨晩の・・・・
「ずっと側にいてほしい。」




わたしは魔法をかけられたお姫様。
愛しい王子様を待つお姫様。



美しく輝く朝日の中で、私の心は晴やかだった。

             
             

              Fine.


by lee-lena | 2015-11-17 01:31 | 心の灯火 | Comments(0)
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