Epilogue 結婚後 15年目
-----亜佳里+旭-----
その日は寒い日でした。
早朝目覚めると隣に旭くんはいなかった。
仕事が忙しくなってきているみたいだからいつものように
徹夜したのでしょう。
起きて行くと、居間の炬燵に上半身を折って寝ていた。
「旭くん、おはよー! お疲れ様。」と小さく言葉を
投げ掛けながら毛布を旭くんの背中に掛けた。
いつものように朝食の準備に取り掛かかることに。
15分もすると味噌汁が仕上がり、焼き魚も焼き上がり
後はほうれん草のお浸しと出し巻き卵でも、と気ぜわしく
最後の朝食の仕上げに取り掛かりながら・・・
「旭くん、風邪ひくから朝食が済んだらちゃんとお布団に
入って一眠りしたほうがいいよ・・。」と声かけをした。
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炬燵のテーブルを布巾で拭いて旭くんを見たら、とても
安らかな寝顔。 けれど何かがおかしいと思った。
鼻の下に手を翳すと全く息をしていない。すぐに救急車を
呼んだけれど、職業柄もう旭くんはこちら側に二度と
戻って来ないのだな、という事は判っていた。
救急車が来るまでの間、私は静かに旭くんに話しかけた。
--旭くん、さよならが云えないまま・・・
私が気がつかないまま・・
あちら側にひとりで行かせてごめんね。
旭くんはきっと身体から少し離れた所で私の話している事
聞いていると思うから、私の言葉は届いていると信じてる。
今まで一杯いっぱい、ありがとうね。
こんな突然のお別れは想像もしてなかったから
びっくりしたし、とっても悲しい。
今度生まれ変わっても旭くんの側にいたいな。
また旭くんの奥さんになってLove Loveしたいし
お父さんになってやさしく頭をなでてあげたいし
お母さんにもなってしっかりと抱きしめてあげたいな。
ふふっ、欲張りだね。
どんな形でもいいから、旭くんが寂しくないように
ずっと側にいるよ。
約束する。
もっともっと旭くんと一緒にいたかった、大切にして
あげたかった。
救急車のサイレンの音が近づく中、私はずっと旭くんに
話しかけ続けた。