(Real 話から創作)
★2◎◎◎年の恋★ その7
-----亜佳里-----
私、明日からは自分の為だけに生きていきます。
-----瑛-----
ど・・・どういうこと? 離婚はしないことにしたよね?
-----亜佳里-----
ごめんなさい。籍は抜かなくて当分このままでいいんです。
た゜けと゜あなたや未由の世話はもうできない。
もう無理なの。
今の私には自分を支えるだけで一杯いっぱいなの。
未由は実家の両親の所で預かってもらおうと思います。
養子縁組もゆくゆくは考えているの。
離婚しないのだからこの家には帰ってくるし、仕事もできる
ところまで続けようと思ってる。
家事はできる時にできる範囲で・・・・だから夫婦というより同居人
っていうほうが形としてはすんなりくるかも。
こんな妻じゃたまらない、我慢ならないって事なら
別れてください。
続きはMoreからどうぞ
-----瑛-----
私は破天荒ともとれる妻の提案に思わずこれまでなかなか目も
合わせる事のできなかった妻の顔を、マジマジと見つめ続けることしか
できなかった。
あんなに溺愛していた娘を自分の両親とは云え、彼らに託すとは・・
一時的にというのでもなく、養子に出すって!!
未由が高校生位の年齢ならまだしも、10才だぞ。
まだまだ母親の恋しい年じゃないか。
両親が手をかけて愛情を注いでやらなきゃいけない年じゃないか。
あかりは・・・・
私の不祥事を知る前のあかりは決してそんな小さな子を手放したり
できるような薄情な女性ではなかったはずだ。
何度 「本気などではなかった、ただの出来心の浮気だったのだ、
住んでいる場所も知らないしメールアドレスも電話番号も削除した、
今後会うつもりはない。
そんな相手なのだから元々特別な感情などもない。」
と妻に説明してもガンとして本気の恋だったはず、と私の説明を
信じようとはせず、突っぱねてきた妻。
今も妻を愛していることに変わりはありませんがどんどん私の
知っている妻が消えていくようだ。
私を許せるよう努力したいと云ってくれた妻の心の中が全く見えなく
なってしまった。
数日前、親しい友人に今回の件を話し妻に元気が無くなった様子を
相談したところ、友人の奥さんがこんな事を話していたらしい。
そしてできれば私に伝えてほしいと。
大きな信頼を寄せすごく仲の良かった夫婦ほど信じきっていた分、
浮気された時それはそれは深く傷つけられ鬱になったりPTSDという
症状を引き起こしたりして深刻な精神状態になるので、気をつけて
あげないと自殺ということもありうると。
あなたが他の女性と3年もの長きに亘り浮気を継続していたということが
奥様にとってどういう事が判りますか?
あなたが軽い気持ちで楽しんだ快楽と引き換えに奥様の心に一生
治らない大きな傷をつけたのです。
その傷は小さくもならないし一生治ることはないのです。
傷つけたあなたが忘れてはいけません。ずっと忘れないでください。
奥様に許しを請い、奥様から「許します」と云ってもらえても
あなたの犯した罪と事実は決して消えません。許されたと思う事は
ただの幻想に過ぎません。
傷つけられた奥様の魂も傷つけた側のあなたの魂も永遠に
忘れはしません。
友人は奥さんから私への戒めを聞いて、プルッと震えが
きたそうです。改めて妻ひとすじと決心したのだとか。
地獄の苦しみの中にいる妻は我が身ひとりで立っているだけが
やっとだと告白しているのだと友人の奥さんからの言葉を思い出し
そう理解できました。
健気にもひとりで何とか踏ん張ろうとしている妻は、それでも
寄り添うつもりの夫が傍にいても掴まろうとはしないようです。
自分の心をズタズタに切り刻み殺そうとしたような男などに
助けを求めるほど愚かじゃないよな。
私は妻の提案を執行命令を聞くような面持ちで受け入れました。
私が妻の提案を受け入れるとほっとしたようで、彼女は自分の
部屋にしている和室へと消えて行き、その夜妻が夕飯を作ることも
食べることもありませんでした。
有り合わせの食材でチャーハンを作り、妻の分も皿に取り分け
声をかけて置いてありましたが疲れていたようでその晩は
風呂に入ることもなく、また食事も摂らず、和室から出てくる
ことはなかった。
その夜ひとりでチビチビビールを飲みながら食事をした。
離婚の危機を本当に乗り越えられたとはとても云えない状況だ。
妻自身混乱していて、今決められないというだけの話で
彼女が精神的に立ち直り、よくよく将来の事を見つめる時が
来たその時、私に審判が・・・あかりの私への審判が下される
のかもしれないと思った。
私はこの時ほど自分の未来が怖いと思ったことはない。
あかりが受けた消えない心の傷をきっと私はこれから少しずつ
この身に受けていかなければならないのだろうと思った。
そして逃げてはいけないということも。
-----亜佳里-----
よかった。
夫にはかなり反対されるかと思い、気を張って臨んだけれど案外すんなりと
受け入れてくれたのでほっとした。
両親と未由には私が病気でしばらくの間と、伝えている。
それに近所なので会おうと思えばいつでも会える。
未由そして両親にも申し訳ないけれど、何とか自分の力で
元の元気な私に戻ってみせるから待っててほしい。