『すっごい、勉強難しくてついていくの大変だよっ』ってしのぶちゃんから
聞いて、S高校を受験することに不安を感じたあの日のことを
思い出す。
参考にS高校のことを訊ねたわたしにそう云ったしのぶちゃんは
規定よりもスカート長けを延ばし、腰周りは細くしめ、そんな風に制服を
着崩していたっけ。 髪の毛はちりちりにパーマをかけ、一重瞼はすっきり
化粧用のeyeなんとかいうボンドで二重瞼にして、入学してからは少し
化粧もほどこしたしのぶちゃんと学校の廊下ですれ違うこともあった。
見た目に限って云えば、(普通の女子学生)99%と(派手な女子学生)1%に分けて
分類されたなら、1%のほうに所属していたと云える。
鞄はペタンこだ。 勉強についていくのが難しいと云っていた・・が、
ついていけなくて必死で勉強しているようには見えない。
気をはって入学したわたしも、こんなのでいいの?と 気抜けするくらい
楽しい高校生ライフを満喫している。 勉強は特に厳しくもない。
普通にまじめにしていれば、充分付いていける。
入学後、しばらくして気がついた。
ひとつ年上のしのぶちゃんが云ったことは事実からかけ離れていたことに。
単に・・気を揉む様なことを云っていたのだと。
ちょっとしたいじわるっていうやつだ。
3軒隣の小さな頃からのご近所さん。
仲良くどこかが主催していた夏のイベントにだって泊まりで
一緒に参加したこともあったのに。
もうそんな日々も遠いものになってしまったのかと
寂しさを感じてしまった。
高校入学と時を同じくして、引っ越したわたし。
何年も経って、乗り換え駅のプラットホームで
彼女を見かけた。 中学までの知っている顔をしていた。
一重瞼の楚々とした大人しめのしのぶちゃんを。
今の彼女はどちらを演じているのだろう?
交わることのないわたしには確認するすべもないけれど。