おはなし
【 わたしの片思い・・・ 】
わたしの近所には結構たくさんの友達が棲息していた。
同学年から1~4才年下あたりの子供が毎日、遊び相手に
困らない程度に住んでいた。男の子も女の子も。
やっぱり相性というものがあって、わたしはかわいくて、やさしい
奈央子ちゃんが一等好きだった。
奈央子ちゃんは、わたしの家を出てすぐ右側の家に住んでいた。
普段から男子も交えてよく遊んだものだ。
ある日、わたしの家を出てすぐ左側の家に住んでいたひとつ年下の
ちょっと我の強いまこちゃんが遊びに来ていた。
小さめの布団を被って遊んでいたら、奈央子ちゃんが「麻衣ちゃん、
あそぼっ♪」とやってきた。
うれしくて、布団から抜け出して「うんっ」と玄関口に向い、
招きいれようとしたところで、気がつけば、まこちゃんが先に
返事をしていた。
「わたしと遊ぶから奈央子ちゃんとは遊ばれへんねんで・・
なっ、麻衣ちゃん!!」と云い、まこちゃんはわたしを布団の中に
引っ張り込んだ。
わたしは奈央子ちゃんと遊びたかった・・・のに。
泣きそうになりながら、何か云わなくちゃと焦ればあせるほど
自分の気持ちをなかなか口に出せなくて。
気がつけば、奈央子ちゃんの姿は玄関から消えていた。
奈央ちゃん・・待って・・まって・・
一緒に遊ぼうよ・・・・わたしの声は届かなかった。
別の日に、なんとか自分の気持ちを伝えたかったけれど、
ふたりきりで遊ぶ機会は訪れることはなかった。
この後、他の誰かも交えて遊ぶことは何度かあったけれど。
なんとか、あの時のイジワルは本心じゃなかったことを
伝えたかったのに。
ぼちぼちみんながスイミング教室に通うようになった頃、
奈央ちゃんに「いっしょに行こなっ」と約束をとりつけた。
なのに実際行くようになると、奈央ちゃんは他の友だちと
同じスイミングスクールへわたしに黙ったまま、行くように
なった。
とても哀しかった。
騙されたことも、あの時のことをわたしのイジワルだととられ、
わたしがどんなに奈央ちゃんを好きなのか、その気持ちが
届かなかった事が。
その後、わたしたちが遊ぶことは一度もなかった。
奈央ちゃんが地元の中学には行かず、お嬢様学校へ
行ってしまったから。